MISに対する私見
人工膝関節置換術(TKA)に対する最小侵襲手術(MIS)は、患者さんにとっては非常に魅力的な素晴らしい可能性を持った手術方法であると考えている。
しかしながら、まだ意見の一致をみておらず改善の余地が残されていることは間違いない。従来のスタンダードTKAとの有用性や安全性との比較検討が必要不可欠である。
その一方で、器具の改良や手術手技の進歩により、近い将来さらなる長期の好成績を獲得する可能性もある。
いずれにしても、MIS TKAは経験の多い熟練した医師によって行うべき手術であると考える。
MIS TKAの今後の可能性
MIS TKAにおいては、また意見の一致をみていない術式である。
しかしながら、手術侵襲を最小限にして、術後の疼痛を減少させることで、可動域訓練や歩行訓練などのリハビリの後療法を容易にすることは、患者さんにとって大きなメリットである。
これらは、患者さんの早期の社会復帰や膝機能の獲得が期待できる可能性を持っている。
MIS TKAは現在まで手術器具や手術器具の改良を中心に進められて来た。今後はMISに合わせて使用しやすいデザインの開発や、コンピューターナビゲーションの応用などが期待される。
また、実際の現場として、当センター(湘南鎌倉人工関節センター)において行っている3次元でのテンプレーティングシステムを活用し、手術中に正確なインプラントの設置が出来るように(アライメント不良を起こさないように)行うことが必要であると考えている。
MISのデメリット
MISにおける問題点としては以下の項目があげられる。
1.手術適応に限界がある。
まず、手術適応であるが従来のスタンダードTKAではほぼ全例に対応できるのに対し、MIS TKAでは適応に限界がある。
たとえば、術前の変形が強い症例(内反膝ではFTA190度以上や外反膝では165度以下)や骨粗鬆の強い症例では禁忌である。なぜなら、狭い術野において無理な力を加えると骨折などの合併症のリスクが高まるからである。
また、再置換術や骨切り術後なども適応とはいえない。高度の肥満や体格の大きい男性などの適応にはなりにくい。
2.手術手技が難しい
手術手技については、ある程度の経験が大切である。専門的になるが、人工膝関節置換術を成功させる最も大切なポイントは正確な骨切りによるアライメントの獲得と、適切な軟部組織バランスの獲得である。
しかしながらMIS TKAにおいてはこれらの大切なポイントを獲得するのが難しいのである。
3.術後長期成績がわからない
MIS TKAがまだ比較的新しい手術方法であり、術後10年~15年といった中期から長期の報告が発表されていない。
したがって、MIS TKAを受けた患者さんの長期予後はわからないのである。
MISのメリット
MIS TKAの利点としては従来法のTKA(Standard TKA)と比べて以下のような利点があげられる。
1.筋肉や腱、靭帯など軟部組織に対する外科的侵襲を出来るだけ少なくする
2.出血量を減少させる
3.早期の機能回復および社会復帰
4.入院期間の減少とそれに伴う医療費の減少
5.小さい手術創や術後の疼痛減少に伴う患者さんの満足度の向上
MIS人工膝関節置換術における手術手技上の要点
一部において、MISは皮切の長さによって議論されていることがあるが、実際には皮切の長短ではなく、以下の項目が手術上の要点として考えられています。
1.皮切の短い
2.膝蓋骨を完全に脱転せずに、大腿四等筋に対する侵襲を可及的に少なくする
3.膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)に対する最小限の侵襲
4.大腿脛骨関節の脱臼をしないこと
最小侵襲手術(MIS)の定義
最小侵襲手術(Minimally Invasive Surgery: MIS)の定義
手術侵襲は創傷治癒とかストレス反応と考えられるため、人工膝関節置換術におけるMISもこれらを考慮する必要がある。
手術に関しては皮膚、皮下組織、筋肉、骨、骨髄を扱うので、理想とすると最小侵襲という点では、小さな皮切(皮膚切開)、可能な限り少ない皮下組織の剥離、筋組織への最小切開、最小の骨切除、骨髄の温存と言うことになる。
しかし、実際は人工関節の形状で骨きり量は決まるためにこれを少なくすることは出来ない。ただし、皮膚切開(皮切)に関しては、従来の15~18cm程度から8~10cm程度のMISのほうが、皮下組織の剥離や当然少なくなり、患者さんに与える侵襲はより少なく、美容的にも心理的にも良い影響を与えると考えられる。
その反面、MISは従来のTKAと比較して手術視野が狭いために、手技が難しく時間が掛かることが多い。手術時間が長くなればその分患者さんに与える侵襲は大きくなるため、より高度の技術と知識、経験をもった専門医が行う必要があると考える。
最小侵襲人工膝関節置換術(MIS TKA)について
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)が臨床に応用されてからすでに50年が経過している。この間、手術手技やデザインなどの改良、向上に伴い、安定して良好な臨床成績が数多く報告されている。
整形外科における手術療法は、可能な限り低侵襲で行うという概念が1990年代後半より導入されてきた。最近では、最小侵襲手術により人工膝関節置換術(MIS TKA)がアメリカで開発され、術後成績が報告されるようになってきた。
日本でも行われてきているが、MIS TKAは未だ発展途上であり、手術手技や臨床的意義などに問題点も残されている。
ここで、最小侵襲人工膝関節置換術(MIS TKA)について、一般論や現在までのトピックス、さらには小生の私見を述べる。
<はじめに>
現在まで行われてきたスタンダードアプローチ(従来の方法)による人工膝関節置換術(TKA)においては、その手術手技、材料、およびデザインなどの改良、発展を経てそのコンセプトはほぼ完成しており、その長期成績も安定して良好な結果が報告されています。
実際にアメリカを世界各国においても人工関節置換術を専門としている殆どの医師が従来のスタンダード法を用いて手術を行っている現状があります。
しかしながら、少しでも患者さんに与える侵襲を少なくし、術後早期の社会復帰を目標とする低侵襲もしくは最小侵襲手術は人工膝関節置換術を専門とする医師としては大きな目標であり課題であると考えます。
また、医療費など現状を考えると包括医療制度や、在院日数短縮化、およびクリニカル・パスの適応などを考慮するとMIS TKAは時代の流れの要素もある。