変形性膝関節症の薬物療法

変形性膝関節症に特別な薬物療法というものはありません。現在、他の疾患も含め治療に用いられている薬には沢山の種類がありますし、その使い方も様々です。
基本的には、薬物療法は「必要最低限」の薬を「適切な」使い方で使用することです。患者さんによっては、完全に医師任せで、自分がどんな薬をどのような目的で使っているのか理解していない方も少なくありません。
ぜひ、自分の膝関節の状態を正しく把握して、医師と相談の上で薬を選択する事をお薦めします。

関節内注射

ヒアルロン酸

これは、軟骨の成分の一つであるヒアルロン酸を人工的に作った製剤です。一般的に医療機関で良く使用される製剤で、膝の関節の中へ直接注入します。このヒアルロン酸は、軟骨の修復を促して、膝本来の滑らかな動きを取り戻す効果が期待できます。
(あくまでも膝の状態によります)効き目は穏やかですが、副作用も少なく、定期的に注入できるメリットがあります。ちなみに、このヒアルロン酸の分子量は190万であり、生体内のヒアルロン酸に近く、粘性や弾性に優れていると報告されています。

ステロイド剤

炎症を抑えて、痛みを軽くする効果があります。疼痛の著しい患者さんに対して、ヒアルロン酸よりも即効性と強い除痛効果が期待できます。しかしながら、感染やステロイド関節症などを引き起こすリスクがあります。したがって、抵抗力の低下している方や糖尿病などの合併所を持っている方に使用するのはお薦めできません。

関節内注射における注意点

・入浴を控えましょう。 (注射後最低8時間以上は注射部位を濡らさないようにしましょう)
・注射部位をむやみに触ったり、もんだりしない。(特に不潔な手で触るのは絶対にやめましょう)
・軽い運動はかまいませんが、注射後に急に激しい運動は避けましょう。

(注)関節内は清潔な場所です。注射した部位からばい菌が入り感染を起すと大変な事のなってしまいます。注射後はむやみに触ったりするのは止めて、清潔に保ちましょう。

非ステロイド系消炎鎮痛剤

いわゆる世間で言われている「痛み止め」の事です。ステロイド性ではなく、炎症を抑えて痛みを和らげる作用を持っています。
一般的に医療機関で処方される薬の多くは1日に3回内服するものが多いですが、種類や患者さんの年齢、症状によって1日1回や2回の薬も使い分けられています。また、痛みと強い時だけ内服するといった屯服として使う事もあります。

また、坐薬(ざやく)といってお尻から挿入するタイプのお薬もあります。これは内服よりも痛みを和らげる効果が強いといった特徴があり、痛みの強い患者さんに処方される事が多くなります。
内服も坐薬もともに胃腸障害を引き起こすリスクがあります。胃や腸に症状がある方への処方は注意が必要となります。

(注)非ステロイド系の消炎鎮痛剤には数多くの種類があります。痛みを和らげる効果や、1日に内服する回数など程度の差こそありますが、どの薬にも胃腸障害などの副作用が報告されています。必ず、医師と相談して適切なものを選択し、正しい方法で使用することがとても大切です。

外用剤

塗り薬や貼り薬のことを外用剤といいます。塗り薬には、クリーム状のものやゲル状のものなどがあります。患者さんの好みや皮膚の状態、そして使い心地によって処方されます。また、塗りこむことによってのマッサージ効果も期待できます。
一方、貼り薬は温熱タイプと寒冷タイプがあります。温熱タイプは唐辛子の成分であるカプサイシンが入っており、温かく感じますが少々かぶれ易いという欠点もあります。また、寒冷タイプのシップは張るときに冷っと冷たく感じますので、冬場や寒い時期は遠慮される方も多くいます。いずれにしても、貼り薬のほとんどには非ステロイド系の消炎鎮痛剤が入っており、痛みを和らげる効果が期待できます。

(注)内服とは異なり、外用剤における胃腸障害の可能性はほとんどありません。皮膚を通じて組織内へ消炎鎮痛剤は浸透してき、痛みを和らげます。
もともと合併症がある方には使いやすいと言えるでしょう。ただし、薬自体の刺激や塗りすぎなどにより、皮膚の湿疹やかぶれが生じることがあります。特に皮膚の弱い方には症状が出やすいといえます。必ず医師や薬剤師から、含まれている成分や正しい使い方について説明を受けられる事をお薦めします。

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