軟骨について
変形性膝関節症ではクッションの役割を果たしている「軟骨」がすり減って、炎症を起し、骨の変形や膝関節の痛みを引き起こします。
では、ここで変形性膝関節症の痛みの原因となっている「軟骨」とはどんなものなのでしょうか。
■関節軟骨(かんせつなんこつ)
関節本来の目的は可動性と支持性です。実は関節軟骨はこの2つの働きを担っているのです。つまり、関節が滑らかに良く動き、重い体重を支えられるように、骨を弾力性のある切り餅状の半透明の薄く覆っている(2~5μm)の物質が関節軟骨です。
この関節軟骨は、コラーゲンという硬い「タンパク質」がスポンジのような構造をして、その間にコンドロイチン硫酸とケラタン硫酸のというコンニャクのような物質が沢山つまって出来ているのです。
この構造のおかげで、関節軟骨は関節を滑らかに動かしたり、思い体重にも耐えられ、さらには走ったりスポーツをしたりする大きな衝撃にも耐えられるのです。
■ヒアルロン酸について
化粧品として、あるいは医療薬品として多く使われている「ヒアルロン酸」ですが、一体どんなものなのでしょうか。ヒアルロン酸の多くは、関節の内面を覆っている滑膜(かつまく)の細胞が、関節液とともに産生してできています。
関節を曲げたり、荷重をかけたり、スポーツにて圧迫されることによって、ヒアルロン酸は、関節軟骨の表面と表面の間にできたひだ(由来)の間に挟まることによって、大きな分子がギュッと圧縮されます。
このヒアルロン酸が圧縮されることによって、関節免を接触しないように押し広げている働きをしているのです。この働きによって、関節軟骨の表面を摩擦によってすり減るのを防いで、長年にわたり関節を使いやすい状態に保っているのです。
▼変形性膝関節症や関節リウマチでは、関節液の主な成分であるヒアルロン酸が酵素の影響で壊されてしまうため、本来のヌルヌルがしなくなってしまいます。その場合、関節内注射で、新しいヒアルロン酸を関節内に注入すると痛みが少なくなり、歩きやすくなるのです。
ちなみに、ヒアルロン酸のネバネバした物質で、自動車におけるオイルやグリースなどの働きもしているのです。
変形性膝関節症の手術方法(手術療法)
変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて保存療法と手術慮法の2つがあります。
手術療法は、保存的治療では効果が得られない場合に選択されます。
・変形性膝関節症に対する手術の種類
■関節鏡視下手術
これは、膝の関節の中にカメラ(内視鏡)入れて行う手術です。関節の中をカメラで観察しながら、変性した軟骨や半月板、増生した滑膜や骨棘の処理を行います。
メリットは手術の傷(キズ)がとても小さく手術後早期に社会復帰する事が出来ることです。欠点として、効果の持続性が短いことがある事です。
■高位脛骨骨切り術(こうい けいこつ こつきりじゅつ)
この手術は、脛骨を骨切りして形を変え、O脚を矯正することにより、膝の内側にかかる負担を軽減させる手術です。比較的若い年代(40~60歳代)で、比較的日常生活の活動性が高い方が治療の対象となります。
手術後は仕事やスポーツを含めて十分に活動できるレベルまで回復ェ切事が期待できますが、矯正した骨の部分が完全にくっつく(癒合)するまで2~3か月を必要とします。
■人工膝関節置換術(じんこう ひざかんせつ ちかんじゅつ)
変形した関節の表面を金属などで出来た人工のものに置き換える手術です。関節の変形が著しく、痛みが強いために日常生活において大きく支障を来たす場合に行われます。
以前は、60から70台以降の高齢者に行われることが多かったですが、人工関節の改良と手術手技の進化により耐久年数も増え、比較的若い40~60歳台の方にも行われるようになってきました。
この手術は痛みを取り除く効果が非常に高く、日常生活に支障をきたすことは殆どなくなります。しかし、正座などの深い曲げ伸ばしや、激しい運動などの無理はできません。
変形性膝関節症の方へ 転ばないようにするために
はじめに:
杖を使うのを恥ずかしいという理由で躊躇される方がいます。ですが、杖をつくことにより転倒を予防できるのです。これは非常に大切な事で、膝関節の痛みや筋力低下のために足元がふらつき転びやすくなる前に、杖を上手く使って予防していきましょう。
■正しい杖の使い方
転びやすくなってから慌てて杖を使い始めても、正しい杖の使い方がわからないと杖の役割が十分に利用できないことがあります。少し早めに正しい使い方を理解して使用することお薦めします。
○杖の選び方
1.杖の長さ
杖の長さを決める上で簡単な指標となる数字があります。
身長の半分 + 3cm程度
ただし、患者さんによって腕や脚の長さには個人差があります。基本的には真っ直ぐに立った際、地面から手首に付け根までの長さが良いとされています。
2.杖の握り方
杖の種類や大きさ、手の大きさにもよりますが、人差し指と中指でまたぐような握り方が安定して良いでしょう。
3.杖のつき方
杖は必ず脚の悪い方とは反対側について歩きましょう。悪い方の脚と同じ側に杖をつくと、全体重が悪い方の脚にかかってしまいます。また、歩行時の方法ですが、杖と片脚を同時に出す方法も、杖と脚を別々に出す方法もありますが、どちらでもかまいません。ぜひ、歩きやすい方で試してみてください。
4.階段昇降時の使い方
杖を使って階段を昇るときは、杖を先に出して、良い方の脚から昇り、悪い方の脚をそろえましょう。一方、階段を下りる際には、杖を出して悪い方の脚から出して、良い方の脚をそろえましょう。
意外と慣れていない方には難しいと思います。練習して、上手に杖を使いこなしましょう。
変形性膝関節症の運動療法
ここでは、変形性膝関節症の進行を予防するために、家庭でも出来る簡単で効果が期待できる運動療法を取り上げていきます。
ポイントは手軽な運動を決して「無理せず」に毎日「続ける」ことが大切です。最初は、医師や理学療法士の指導を受ける事を薦めます。
■筋肉を鍛える運動
○太ももの筋肉を鍛える運動 その1 <椅子を用いて行う方法>
1.椅子に座って、出来る限り背すじを伸ばしましょう。
2.膝をゆっくりとのばしていきます。
3.脚をまっすぐに伸ばした状態で5つを目標に数えましょう。
4.脚をゆっくりと下ろします。
5.これをセットで数回行います。すこしづつ回数を増やしても良いでしょう。
○太ももの筋肉を鍛える運動 その2 <寝て行う方法>
1.仰向けに寝て、片方の脚を伸ばし、もう一方の脚を軽く曲げます。
2.伸ばした脚をそのままゆっくり上に上げます。
3.5つを目標に数えて、ゆっくり下ろします。
4.これをセットにして数回繰り返します。
○お風呂で出来る運動 <入浴中に行う方法>
1.浴槽の壁に両脚をしっかりとつけます。
2.ゆっくりと、壁を押すように両脚に力を入れます。
3.膝を伸ばす時に力を入れて数回数えます。
4.これをセットに30回を目標に行いましょう。
○股関節の筋肉を鍛える運動
1.横向きに寝て、頭を手で支えましょう。
2.上の脚を伸ばしたままゆっくりと上に上げていきます(股を開くようにゆっくりと)。
3.数を数えてゆっくりと下ろします。
4.セットにして数回行います。
○柔軟性を高める運動
1.床に座って脚を伸ばします。
2.膝に力を入れてつま先を伸ばします。
3.伸ばした状態で数を数えます。
4.次に、膝に力を入れてつま先を反らしてますを数えます。
5.セットにして、片脚つづそれぞれ20~30回行いましょう。
変形性膝関節症の薬物療法
変形性膝関節症に特別な薬物療法というものはありません。現在、他の疾患も含め治療に用いられている薬には沢山の種類がありますし、その使い方も様々です。
基本的には、薬物療法は「必要最低限」の薬を「適切な」使い方で使用することです。患者さんによっては、完全に医師任せで、自分がどんな薬をどのような目的で使っているのか理解していない方も少なくありません。
ぜひ、自分の膝関節の状態を正しく把握して、医師と相談の上で薬を選択する事をお薦めします。
「関節内注射」
■ヒアルロン酸
これは、軟骨の成分の一つであるヒアルロン酸を人工的に作った製剤です。一般的に医療機関で良く使用される製剤で、膝の関節の中へ直接注入します。このヒアルロン酸は、軟骨の修復を促して、膝本来の滑らかな動きを取り戻す効果が期待できます。
(あくまでも膝の状態によります)効き目は穏やかですが、副作用も少なく、定期的に注入できるメリットがあります。ちなみに、このヒアルロン酸の分子量は190万であり、生体内のヒアルロン酸に近く、粘性や弾性に優れていると報告されています。
■ステロイド剤
炎症を抑えて、痛みを軽くする効果があります。疼痛の著しい患者さんに対して、ヒアルロン酸よりも即効性と強い除痛効果が期待できます。しかしながら、感染やステロイド関節症などを引き起こすリスクがあります。したがって、抵抗力の低下している方や糖尿病などの合併所を持っている方に使用するのはお薦めできません。
■関節内注射における注意点
・入浴を控えましょう。 (注射後最低8時間以上は注射部位を濡らさないようにしましょう)
・注射部位をむやみに触ったり、もんだりしない。(特に不潔な手で触るのは絶対にやめましょう)
・軽い運動はかまいませんが、注射後に急に激しい運動は避けましょう。
(注)関節内は清潔な場所です。注射した部位からばい菌が入り感染を起すと大変な事のなってしまいます。注射後はむやみに触ったりするのは止めて、清潔に保ちましょう。
「非ステロイド系消炎鎮痛剤」
いわゆる世間で言われている「痛み止め」の事です。ステロイド性ではなく、炎症を抑えて痛みを和らげる作用を持っています。
一般的に医療機関で処方される薬の多くは1日に3回内服するものが多いですが、種類や患者さんの年齢、症状によって1日1回や2回の薬も使い分けられています。また、痛みと強い時だけ内服するといった屯服として使う事もあります。
また、坐薬(ざやく)といってお尻から挿入するタイプのお薬もあります。これは内服よりも痛みを和らげる効果が強いといった特徴があり、痛みの強い患者さんに処方される事が多くなります。
内服も坐薬もともに胃腸障害を引き起こすリスクがあります。胃や腸に症状がある方への処方は注意が必要となります。
(注)非ステロイド系の消炎鎮痛剤には数多くの種類があります。痛みを和らげる効果や、1日に内服する回数など程度の差こそありますが、どの薬にも胃腸障害などの副作用が報告されています。必ず、医師と相談して適切なものを選択し、正しい方法で使用することがとても大切です。
「外用剤」
塗り薬や貼り薬のことを外用剤といいます。塗り薬には、クリーム状のものやゲル状のものなどがあります。患者さんの好みや皮膚の状態、そして使い心地によって処方されます。また、塗りこむことによってのマッサージ効果も期待できます。
一方、貼り薬は温熱タイプと寒冷タイプがあります。温熱タイプは唐辛子の成分であるカプサイシンが入っており、温かく感じますが少々かぶれ易いという欠点もあります。また、寒冷タイプのシップは張るときに冷っと冷たく感じますので、冬場や寒い時期は遠慮される方も多くいます。いずれにしても、貼り薬のほとんどには非ステロイド系の消炎鎮痛剤が入っており、痛みを和らげる効果が期待できます。
(注)内服とは異なり、外用剤における胃腸障害の可能性はほとんどありません。皮膚を通じて組織内へ消炎鎮痛剤は浸透してき、痛みを和らげます。
もともと合併症がある方には使いやすいと言えるでしょう。ただし、薬自体の刺激や塗りすぎなどにより、皮膚の湿疹やかぶれが生じることがあります。特に皮膚の弱い方には症状が出やすいといえます。必ず医師や薬剤師から、含まれている成分や正しい使い方について説明を受けられる事をお薦めします。
変形性膝関節症に対する装具療法
変形性膝関節症に使用する装具の目的は二つあります。
1)膝の関節にかかる負担を軽くすること。
2)関節を安定化すること。
■サポーター
サポーターは医療機関でなくても自分で気軽の購入する事が出来ます。ただし、サポーター自体には先の述べた装具療法の目的である膝関節の負担を軽減したり、膝関節の安定させる効果はありません。かなりの方が誤解していますので注意が必要です。
このさいのサポーターの効果としては、装着した時に感じる安定感と、膝関節の保温効果が主な働きといえます。
■足底板
足底板とは、靴の中に直接入れたり、足につけたりして使用する装具です。O脚を若干矯正することによって立ったり歩いたりする時に、膝の内側にかかる負担を減らして痛みを和らげることを目的にしています。
この装具は、変形性膝関節症の初期から中期に方に用います。進行して変形が著しい方にはあまり有効とはいえません。
■機能的膝装具
ここでいう機能的膝装具とは、プラスチックや金属などの枠組みで作られている装具と指します。この装具の効果としては、膝関節の安定性を高めることによって痛みを和らげることです。簡単な装具であれば、取り外しも簡単であり費用も比較的安くすみますが、関節安定効果としては高くありません。
一方、しっかりとした複雑な装具は関節を安定化させる効果は非常に高くなりますが、取り外しが面倒なことが多く、費用もかさむという欠点もあります。
■杖
膝関節だけでなく、脚全体にかかる負担を軽減させます。杖によって体重を分散させることによって歩行時の膝の痛みが緩和されますし、安定性も増すので結果的に転倒予防の効果も得られます。
杖には松葉杖をはじめ多くの種類がありますが、一般的に日常生活においてはT字杖が使用されています。
変形性膝関節症に対するリハビリテーション
変形性膝関節症に対するリハビリテーションの主な目的は、膝の曲げ伸ばしの回復(可動域訓練)と、膝を支える筋力の回復(筋力訓練)の2つです。
この2つのリハビリテーションは膝本来の大きな2つの機能である「可動性(かどうせい)」と「支持性(しじせい)」を回復させる上でとても大切な内容です。
これらは変形性膝関節症の治療のみならず予防法としてもとても重要になってきます。また、人工膝関節置換術を受ける方や受けられた方にも大切になってきますので、多くの方々に行って頂きたい内容といえます。
■可動域(かどういき)訓練
可動域訓練とは、変形性膝関節症によって関節の動きが悪く滑らかに動かなくなったり、動く範囲が制限されたりした場合に、その動きの改善や制限された動きの範囲を広くするために行われます。
ただし、やみくもに動かすのでは時に症状を悪化させる事もあるので注意が必要です。膝の曲げ伸ばしの訓練は、膝を温めてから行うのが良いでしょう。温めてから行うと、痛みも比較的少なく、関節や筋肉も柔軟になっているのでより効果的です。
自宅で行う場合、蒸しタオルを10~15分程度膝にあてて温めたり、入浴時にゆっくりと温めてから浴槽の中で膝の訓練をするのが良いでしょう。
■筋力訓練
変形性膝関節症では、太ももの膝の周りの筋肉を鍛えて、膝の関節を支える力をつけることがとても大切です。なぜなら、膝には歩行時に体重の2~3倍、階段昇降時た運動時には5~6倍もの負担がかかるからです。
やり方としては、仰向けに寝た状態や、椅子に座った状態で片方の足を上げ、そのまま10秒程度維持するようにします。最初は少ない回数で短い時間の保持でかまいません。なお仰向けで行った場合は、脚は30~45度程度に挙げましょう。
この方法は、誰でも自宅でもやる事が可能で膝関節を支える上で最も重要な大腿四等筋の力を鍛える方法として最も簡単な方法です。ぜひ、試してください。(ただ、筋力はすぐにはつきません。最低でも2~3月間は続けてみましょう。)
また、水中歩行もお薦めです。プール内での運動は浮力のために「膝への負担が少ない」状態で行うことができますので、膝の痛みの強い方にも行いやすいといえます。
(注)医療機関で理学療法士のもとで行う場合は心配ありませんが、自宅などで一人で行う場合は「正しいやり方」と「適切な量」が大切になります。間違った方法や訓練のし過ぎでは逆に症状が悪化する事もあります。その際には必ず医療機関を受診して医師や理学療法士の指導を受けられることをお薦めします。
変形性膝関節症の治療方法
変形性膝関節症の治療方法は「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。
保存療法の柱は、「リハビリテーション」、「装具療法」、そして「薬物療法」です。一般的にはこれらを組み合わせて行われます。
●保存療法
・リハビリテーション
・装具療法
・薬物療法
●手術療法
手術療法は、これらの保存療法で効果が得られない場合に選択されます。多くは、保存的治療で経過を見ていきますが、変形性膝関節症として進行しており、症状が著しい場合や、日常生活において大きな支障がある場合は早期に手術に踏み切る場合も少なくありません。
いずれにしても、変形性膝関節症の多くは「加齢による関節の変化」が主な原因でありますので、膝関節の機能を維持しようとする患者さん本人の強い気持ちが大切になってきます。
変形性膝関節症の検査と診断
変形性膝関節症の診断は、一般的には次の手順で行われています。
■問診
患者さんが、いつ頃からどんな症状があるのか、現在一番困っている症状はどんなものなのか、(痛みなのか、それとも関節の動きが制限されている事なのかなど)、膝のけがなどの経験があるかなどを聞きます。
患者さんによっては、緊張などにより、ご自身の症状や状態などを正確にお話できない方もおられます。ぜひ、外来を受診される前に症状や状態などを頭の中で整理されておく事をお薦めします。
■触診
実際に、膝関節の可動域の程度(曲げ伸ばしの状態)、痛みの部位、程度、さらには腫脹や熱感の有無や関節の安定性(不安定性は無いかなど)をチェックします。
また、歩行する際の状態(歩容)や下肢全体のかたち(変形などが無いか)、そして筋肉の状態(筋肉の萎縮など)も確認します。
■レントゲン検査
レントゲンでは、膝関節を構成する3つの骨である大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿の骨)の「形」や「変形」の程度を確認します。
また、変形性膝関節症に見られる軟骨の磨耗(まもう:すり減り具合)の程度も、関節の隙間の開き具合から推定します。このレントゲン検査によって、変形性膝関節症の診断と病期(びょうき:進行の程度)を判断する事が出来ます。
■血液検査・関節液検査など
膝の痛みを生じる疾患は変形性膝関節症だけではありません。患者さんによっては他の病気が考えられる場合もあります。
その際には、血液検査や関節液検査などを行います。これによって、関節リウマチや感染性の関節炎などとの鑑別が出来ます。
■MRI検査
レントゲン検査では描出されない構造が画像で確認できます。これは、磁気を用いて膝の内部を映し出し、コンピューターで画像を作成する検査方法です。
この検査によって、レントゲンのように骨だけではなく、「軟骨」、「靭帯」、「筋肉」なども詳細に評価する事が可能です。
変形性膝関節症の主な症状
それでは、変形性膝関節症にみられる主な症状について説明しましょう。
1)疼痛(関節の痛み)
変形性膝関節症の患者さんの殆どの方に、膝関節の痛みが生じます。その疼痛の殆どは、歩行したり、立ちしゃがみをしたり、階段の上り下りなどのいわゆる「運動時痛」です。安静にしている時でも痛みがでる「安静時痛」は非常に少ないので、この場合は他の疾患も考える必要があります。
痛みの部位は、変形している部位によりますが、通常は内側タイプが多いため、関節の内側に痛みを生じる事が多くなります。
2)可動域制限(膝関節の曲げ伸ばしの制限)
ある程度進行してくると、膝関節の屈曲(まげる)動作や伸展(のばす)動作に制限が生じてきます。曲がりが制限されてくると、「正座ができない」として外来を受診される患者さんが少なくありません。ただ、軽度の制限であれば日常生活に大きな支障はありません。
3)関節水腫(関節に水がたまる)
関節炎によって、関節の中に水がたまる事があります。この場合、膝関節が腫れぼったい、膝が重だるいといった症状になってきます。頻繁に水を抜くのは良くありませんが、ある程度の貯留が認められる場合には、抜くことが必要になってきます。
変形性膝関節症の頻度
今までに報告されている調査から次の事がわかっています。
まず、変形性膝関節症は年齢とともに増加するということです。一般の人を対象にした疫学調査では、60歳以上で女性の約40%、男性の約20%がレントゲン上、「変形性膝関節症」と診断されます。
さらに、この割合は年齢とともに上昇して、80歳代の女性では半数を超える60%以上、男性でも約50%近くに達します。そして、レントゲン上で変形性膝関節症の所見がある人のうち約20%に膝の痛みや腫れなどの自覚症状が見られます。また、注目すべき結果として、どの年代でも女性の割合が男性に比べて1.5~2倍多いということです。
★O脚で肥満傾向の女性は要注意
現在、変形性膝関節症の発症・悪化要因について多くの研究が盛んに行われています。これまで報告されている内容では、「女性」、「肥満」、そして「O脚」について変形性膝関節症との関係があると言われています。
特に日本人ではもともとO脚の傾向があり、膝の内側により負担がかかりやすくなるため、日本人の変形性膝関節症はその90%ちかくが膝の内側により強い変形が見られます。いずれにしても、O脚で肥満傾向のある女性は要注意であると言えるでしょう。
変形性膝関節症とは
人工膝関節置換術の原因疾患として最も多いのが「変形性膝関節症:へんけいせいひざかんせつしょう」です。
変形性膝関節症とは、クッションの役割をしている軟骨がすり減り、関節に炎症が起こったり変形したりして関節に痛みを引き起こす病気です。
■正常な膝関節
正常な膝関節では、骨の表面にある軟骨が正常に機能しているため、膝関節に加わる負担や衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにしています。また、滑膜から分泌されている関節液は軟骨の成分の一つであるヒアルロン酸を含んでいる粘調度の高い粘り気のある液体で、膝関節が滑らかに動く潤滑油と軟骨の栄養の役割をはたしています。このように正常の膝関節では本来の滑らかな動きが痛み無く可能になります。
■変形性膝関節症(初期から中期)
まだ初期の変形性膝関節症では、軽度の関節軟骨の磨耗が生じているものの、本人が自覚するような症状はほとんどありません。
ところが、軟骨の磨耗がある程度すすむ(中期)んでくると、膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、そして歩行時の膝にかかる負担の増加など、さらには軟骨、半月板の変性による刺激などによって関節炎が生じます。
関節炎が生じると、膝を曲げ伸ばししたときの痛み(動作時痛:どうさじつう)や曲げ伸ばしの動きが制限(可動域制限:かどういきせいげん)が生じます。また、関節液が多量に分泌されて関節に「みず」がたまること(関節水腫:かんせつすいしゅ)が起こったりします。なお、この時は関節内のヒアルロン酸は逆に減少して、粘調度は低下しています。
<変形性膝関節症の進行度におけるレントゲン所見:初期>
<変形性膝関節症の進行度におけるレントゲン所見:中期>
■変形性膝関節症(進行期)
さらに変形性膝関節症が進行(進行期)してくると、軟骨の磨耗(まもう)がさらに進み、関節の土台の骨を成している(軟骨下骨:なんこつかこつ)が露出(ろしゅつ)したり、骨棘(こつきょく)といった骨そのものの変形が生じたりします。
ここまでくると、単純な膝の動き(膝を動かしたり立って歩いたりする)のたびに、硬い骨同士が直接ぶつかり合うために非常に強い痛みを生じてしまいます。また、膝関節の曲げ伸ばしの制限(可動域制限:かどういきせいげん)も高度となり日常生活において大きな障害となります。
<変形性膝関節症の進行度におけるレントゲン所見:末期>