人工股関節置換術における貯血と輸血

人工股関節置換術では、骨からの出血などのために輸血が必要になってきます。ここでは、輸血に対する説明を行います。

自己血輸血

自己血輸血は、輸血が必要となる場合に備えて、手術前に自分の血液を準備するものです。
つまり、手術前に自分の血液をとって保存しておき、手術中、後に自分の体に戻す(輸血)することです。

この自己血輸血のもっとも優れた利点は、あくまでも血液は自分のものを使うので、血液が合わない(輸血の副作用)が起こらないことです。さらに、肝炎やAIDSといった感染症の危険性もありません。

ちなみに、手術にどれくらいの血液が必要になるかは、手術の内容や手術前の患者さんの全身状態にもよります。手術前に貧血の強い方には自己血輸血は出来ません。

なお、血液は35日間保存することが可能です。そのため、貯血する血液量を決め、手術日から逆算して行います。

日本赤十字からの他人の輸血(同種血輸血)

日本赤十字社からの他人の血液を輸血することを同種血輸血と言います。
これは、患者様と同型の血液を選択し、検査を行い「適合」となった血液を輸血するものです。

問診等により健康状態が確認された国内の献血者から採血し、さらに感染症検査を行い「適」となった血液のみが医療へ提供されています。

しかしながら、輸血後の感染症(B型肝炎、C型肝炎、AIDSなど)のリスクが全くないわけではありません。
また、非常に稀ではありますが、他人の血液が入ることで輸血の副作用(蕁麻疹、発熱、血圧低下、溶血性反応)が起こる可能性もあります。

そのため、可能な限り同種血輸血が望ましいのですが、予想外の出血などや、手術前の全身状態が悪く自己血輸血が出来ない場合があります。その際には、この同種血輸血を行います。

術中回収血輸血

術中回収血輸血とは、手術中に集められた自分の血液(手術により出血した血液)を、特別な機械で洗浄し、手術中、及び手術後に体に戻すことです。
非常に優れた方法ですが、このシステムには限界があり、出血した血液を全て元に戻して使うことができません。(約1/3程度です。)

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