変形性股関節症に対する手術療法
変形性股関節症における手術療法は、保存的治療で改善が得られない場合が対象になってきます。
もちろん、痛みの程度や進行の程度、その方の生活スタイルや今後の希望なども治療方法には大きな影響を与えますので、十分に医師と相談して決めることが望ましいと考えられます。
術式としては寛骨臼回転骨切り術やChiari骨盤骨切り術、臼蓋形成術、外反骨切り術、内反骨切り術などといった「骨切り術」と「人工股関節置換術」に大別できます。
あくまでも一般的ですが、骨切り術は年齢や職業、股関節の形態や適合性、進行度などを十分に検討した上で決定されます。
また、人工股関節置換術は、骨切り術の適応がなく、変形が進行した症例が適応になることが多くなってきます。この場合も適応については患者さんの生活スタイルや痛みの程度など多くの要素で異なってきますので、専門医との相談のうえ決定されることを強くお勧めします。
変形性股関節症の保存的治療
保存的治療はまず「日常生活動作の注意点」を指導する事が非常に大切です。その中で最も効果があるのは「股関節にかかるストレスを減らす」ことです。
●減量
股関節にかかるストレスを少なくする上で「減量」は最も効果があると考えられます。(もちろん、標準体重の方が無理に減量する必要はありません)
股関節は膝関節同様、体重を支える関節(荷重関節)です。一般的に歩行する際には体重の約3倍、階段昇降時には5~6倍の負担が掛かると言われています。
ですから、体重を1キロ減らすだけで歩行中の股関節にかかるストレスを3キロも減らすことになります。
つまり体重1キロの減量が3キロのストレス減に繋がるのです。
●杖歩行
股関節への負担を減らすもう一つの有効な方法として「杖歩行」があります。
杖や歩行器具を使用することにより、股関節に掛かる負担が随分と減ります。
これは変形性股関節症の方にとって非常に効果的です。
よく、外見を気にされて杖の使用を拒まれる方がいますが、除痛効果だけでなく、症状の進行を防ぐ意味においても効果がありますので、主治医や理学療法士と十分相談された上で使用を検討されることをお勧めします。
●リハビリテーション
リハビリによる筋力強化訓練なども効果あります。変形性股関節症による痛みのために、どうしても運動が困難になってきます。
すると、筋力が低下し股関節を支えることが出来なくなってしまいます。
するとさらに痛みが悪化したり、股関節の可動域が低下してしまうという「悪循環」に陥ってしまいます。
そこで、筋力つける(維持する)運動療法や関節の動きの幅を維持する(拡げる)ストレットなどのリハビリも効果があります。
ただし、この場合も医師や理学療法士と十分に相談の上、メニューをつくってもらい無理のない効果的なリハビリをされることをお勧めします。
●薬物療法
・内服
主に非ステロイド系抗炎症剤を用います。アスピリン、インドメタシン、ロキソプロフェン、ナプロキサン、ボルタレンなどといった薬が一般的に使用されています。
これらの薬は時に非常に効果がありますが、時に胃腸障害などの副作用をもたらすこともありますので、医師の指示通りに内服されることをお勧めします。
また、何か副作用と思われる症状がでたらすぐに連絡をして相談されると良いでしょう。
・外用剤
湿布、塗り薬なども適宜使用するとよいでしょう。外用剤の利点としては、胃腸障害など、内服で見られるような内臓の副作用がほとんどないことでしょう。
かぶれなどの副作用もありますが、内服と比較すると安全に使用できます。
変形性股関節症のレントゲン所見と分類
変形性股関節症のレントゲンでは以下のような所見が特徴となります。
・関節の適合不全(臼蓋と骨頭の適合が悪い)
・関節裂隙の狭小化(関節のすき間が狭くなる状態)
・骨の硬化(こうか)像(骨が硬くなっている状態)
・嚢腫形成(骨に穴があいている状態)
・骨棘(こつきょく)形成(骨のとげ)
変形性股関節症はレントゲン所見によって4つに分類されています。
1.前股関節症
2.初期股関節症
3.進行期股関節症
4.末期股関節症
さらに詳細な情報を得たり、手術前の検討にはCTやMRIが必要になります。
二次性変形性股関節症のメカニズム
二次性変形性股関節症の病態メカニズムとして、臼蓋と骨頭の(生理的な)位置関係の破掟があげられます。
これは、臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼などによって、臼蓋と骨頭の生理的(正常)な位置関係が崩れるために(ボールとソケットが合わない)、臼蓋と骨頭の接触面積が減ってしまうことによって生じると考えられています。ここでもう一度関節軟骨について触れます。
痛みを伴わず、滑らかな動きを可能にしているのが関節軟骨ですが、実はこの関節軟骨はボールの部分である骨頭とソケットの部分にあたる臼蓋の生理的な接触と適度な圧迫によって正常に機能しているのです。
もともと、関節軟骨は滑液(関節液)から栄養を受けていますが、この生理的な接触と適度な圧迫(生理的な位置関係)が破掟すると栄養を受けられません。
もし、臼蓋と骨頭の正常な位置関係が壊れると、このように軟骨は滑液からの栄養が途絶えてしまいます。つまりは磨耗、変性を起こしてしまいます。当然、この変性は軟骨だけにとどまらず、周囲の骨、滑膜、腱、筋肉へ悪影響を及ぼします。
このような状態が続くと、軟骨と骨は破壊と修復反応を繰り返します。そうして次第に進行し、関節の変形が完成されると考えられています。
変形性股関節症の分類
変形性股関節症は、何らかの基礎疾患や関節の構造に異常がある場合は「二次性股関節症」、基礎疾患がない場合は「一次性股関節症」に分類されています。
日本では、一次性股関節症の発生はきわめて少なく、二次性股関節症が圧倒的に多数を占めています。
特に先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全(きゅうがい けいせい ふぜん)を基盤とする症例が大部分で女性に多くみられます。
その他にはヘルテス病や外傷後に見られる(大腿骨頚部骨折など)や炎症性、感染性疾患後の発生も時に見かけられます。
変形性股関節症~はじめに~
股関節が滑らかに、痛みを伴わずに動けるのは関節軟骨があるからです。ところが、この関節軟骨が傷んでしまうことがあります。これを変形性股関節症と言います。
医学的にこの変形性股関節症は、関節軟骨の磨耗(磨り減ってなくなること)と変性による関節破壊、および反応性の骨増殖を特徴とする慢性の疾患です。
関節軟骨が磨り減ってしまうので、滑らかな動きが出来ませんし、当然痛みも伴ってきます。最初は特別な動きの時に痛みを感じるだけですが、進行してくると何もしていない時にも痛みを感じるようになってきます。
また痛みのために足を引きずる、痛みの為に震えてしまうなどといった障害が起こることも少なくありません。さらに、関節が動かしにくく硬くなり、股関節が開かなくなってきます。
この状態のことを可動域制限と言います。また脚長差といって、脚の長さに差が出てきます。
これは軟骨が磨耗し、骨が変形してくるためで患肢(変形性股関節症)の肢が短くなります。
このように日常生活動作に大きな障害をもたらします。