人工膝関節置換術の合併症
現在では人工関節の材料やデザインの改良、手術手技の格段の進歩などによって、安定して良い成績が得られるようになってきました。
その結果、人工膝関節置換術による合併症はかなり少なくなってきましたが、完全にゼロに出来るわけではありません。
ここでは、実際に臨床の現場でみられる人工膝関節置換術の合併症を挙げていきます。
■感染
数%(1~2%)という低い発生率ですが、一度感染を起すと治療に難渋することも少なくなくありません。多くは細菌による感染で、一度骨の中まで細菌が入るとなかなか死滅させる事が出来ずに、根治させるのが困難になってきます。
一般的には、関節内の傷んだ組織を切除して十分に洗浄したり、進行して骨が解けてしまった場合などでは、一度入れた人工関節を取り出します。
また、手術後早期には感染兆候があらわれずに、体力が低下したり、抵抗力が落ちたときになどに、感染の症状が現れるケースもあります。ケースによっては術後数年経過してから感染が起こることもあるので、定期的な経過観察が必要です。
■人工関節のゆるみ
細菌感染によって骨の一部が溶けてしまうと、人工関節と骨の間に「ゆるみ」が生じる事があります。
また、人工膝関節の超高分子ポリエチレンや金属の磨耗分(まもうふん)が生じて、この磨耗分を細胞が取り込んで炎症を起したりします。さらには、この磨耗分が人工膝関節と骨の隙間に侵入して骨が溶解してくると、人工膝関節にゆるみが生じてくる事があります。
■人工関節の破損
大きな衝撃が繰り返して加わったり、人工関節に過度のストレスが加わったり、軟部組織のバランスが悪く、バランスよく荷重できなかった場合に、人工関節の素材である超高分子ポリエチレンや金属が異常に摩耗したり破損することが稀にあります。
このような場合は、多くの摩耗粉が発生したりするので、人工関節のゆるみが生じたりします。
■深部静脈炎・血栓症・肺塞栓症
人工関節置換術の手術後、下肢の深部(しんぶ)静脈に血栓(けっせん)が生じる深部静脈血栓症が起こり、脚がむくんだり痛みが出たりすることがあります。
また、原因はさまざまですが、この血栓がはがれて血中に遊離(ゆうり)してしまうと、血液とともに流れて肺の血管に防いでしまう場合があります。これは肺塞栓症と呼ばれ、ときに命にかかわる非常に危険で、重大な合併症です。
深部静脈炎や血栓症の予防のために、圧迫包帯や弾性ストッキングで下肢の静脈の血流障害を予防したり、血液の凝固をふせぐ薬剤を用いたり、脚を自動的にマッサージする器械(フットポンプ装置)などを用いたりして、人工関節の術後、出来るだけ早い時期に、脚の運動やストレッチを始めるなどの予防法がとられます。
カテゴリー:人工膝関節置換術
関節リウマチとは
関節リウマチは、関節に炎症が起こって、関節が腫れてしまったり、痛みを引き起こす病気です。
女性に多く、男女比は1:4と言われています。多くは、30~50歳前後で発症することが多く、若者から高齢者全般にまで及びます。
■原因
はっきりとした原因は明らかにされていません。ただし、「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」の一つであると考えられています。
■自己免疫疾患
体の中に、最近やウイルスなどの異物が進入してくると、体の中ではその異物に対して攻撃して、排除しようとする反応が起きます。これを「免疫反応」といいます。
正常な体では、この反応は正常に機能して、異物と自分の細胞を見分ける事が出来るため、異物だけを選んで攻撃する事が出来るのです。
しかしながら、免疫機能に異常が生じると、異物と自分の細胞との区別がつかずに、自分自身の細胞を攻撃してしまうことが起こります。そうなると、様々な病気が引き起こされてしまいます。このようにして起こったさまざまな病気の総称を「自己免疫性疾患」と言います。
■機序(きじょ)
関節リウマチでは、関節を覆っている関節包という関節の袋の内側にあり滑膜(かつまく)が炎症を起して増殖してきます。すると、骨や軟骨が徐々に破壊されていきます。
この関節炎は全身どこの関節にも生じる可能性があります。多くは、手足の指の関節に痛みや腫れを伴いますが、やがて肘や肩、膝関節、そして股関節などにも広がっていきます。
■症状
膝関節に関節リウマチが生じると、膝が腫れてこわばり感が出てきます。やがて、徐々に骨が崩れてきて(骨びらん)、さらには炎症が軟骨にも拡大していきます。そうなると軟膏が薄くなって骨同士が擦れるようになって痛みを感じるようになります。
進行して末期になってくると、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)がつぶれてかたまってしまい、膝関節として全く動かなくなってしまう事もあります。
■治療
関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬やステロイド剤、痛み止めの薬などの薬物療法が主流です。また、リハビリテーションなどの運動療法も併用します。近年では、生物製剤も使用されるようになってきました。なお、関節の破壊が強い場合は人工関節置換術の手術療法の適応になります。
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軟骨について
変形性膝関節症ではクッションの役割を果たしている「軟骨」がすり減って、炎症を起し、骨の変形や膝関節の痛みを引き起こします。
では、ここで変形性膝関節症の痛みの原因となっている「軟骨」とはどんなものなのでしょうか。
■関節軟骨(かんせつなんこつ)
関節本来の目的は可動性と支持性です。実は関節軟骨はこの2つの働きを担っているのです。つまり、関節が滑らかに良く動き、重い体重を支えられるように、骨を弾力性のある切り餅状の半透明の薄く覆っている(2~5μm)の物質が関節軟骨です。
この関節軟骨は、コラーゲンという硬い「タンパク質」がスポンジのような構造をして、その間にコンドロイチン硫酸とケラタン硫酸のというコンニャクのような物質が沢山つまって出来ているのです。
この構造のおかげで、関節軟骨は関節を滑らかに動かしたり、思い体重にも耐えられ、さらには走ったりスポーツをしたりする大きな衝撃にも耐えられるのです。
■ヒアルロン酸について
化粧品として、あるいは医療薬品として多く使われている「ヒアルロン酸」ですが、一体どんなものなのでしょうか。ヒアルロン酸の多くは、関節の内面を覆っている滑膜(かつまく)の細胞が、関節液とともに産生してできています。
関節を曲げたり、荷重をかけたり、スポーツにて圧迫されることによって、ヒアルロン酸は、関節軟骨の表面と表面の間にできたひだ(由来)の間に挟まることによって、大きな分子がギュッと圧縮されます。
このヒアルロン酸が圧縮されることによって、関節免を接触しないように押し広げている働きをしているのです。この働きによって、関節軟骨の表面を摩擦によってすり減るのを防いで、長年にわたり関節を使いやすい状態に保っているのです。
▼変形性膝関節症や関節リウマチでは、関節液の主な成分であるヒアルロン酸が酵素の影響で壊されてしまうため、本来のヌルヌルがしなくなってしまいます。その場合、関節内注射で、新しいヒアルロン酸を関節内に注入すると痛みが少なくなり、歩きやすくなるのです。
ちなみに、ヒアルロン酸のネバネバした物質で、自動車におけるオイルやグリースなどの働きもしているのです。
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変形性膝関節症の手術方法(手術療法)
変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて保存療法と手術慮法の2つがあります。
手術療法は、保存的治療では効果が得られない場合に選択されます。
・変形性膝関節症に対する手術の種類
■関節鏡視下手術
これは、膝の関節の中にカメラ(内視鏡)入れて行う手術です。関節の中をカメラで観察しながら、変性した軟骨や半月板、増生した滑膜や骨棘の処理を行います。
メリットは手術の傷(キズ)がとても小さく手術後早期に社会復帰する事が出来ることです。欠点として、効果の持続性が短いことがある事です。
■高位脛骨骨切り術(こうい けいこつ こつきりじゅつ)
この手術は、脛骨を骨切りして形を変え、O脚を矯正することにより、膝の内側にかかる負担を軽減させる手術です。比較的若い年代(40~60歳代)で、比較的日常生活の活動性が高い方が治療の対象となります。
手術後は仕事やスポーツを含めて十分に活動できるレベルまで回復ェ切事が期待できますが、矯正した骨の部分が完全にくっつく(癒合)するまで2~3か月を必要とします。
■人工膝関節置換術(じんこう ひざかんせつ ちかんじゅつ)
変形した関節の表面を金属などで出来た人工のものに置き換える手術です。関節の変形が著しく、痛みが強いために日常生活において大きく支障を来たす場合に行われます。
以前は、60から70台以降の高齢者に行われることが多かったですが、人工関節の改良と手術手技の進化により耐久年数も増え、比較的若い40~60歳台の方にも行われるようになってきました。
この手術は痛みを取り除く効果が非常に高く、日常生活に支障をきたすことは殆どなくなります。しかし、正座などの深い曲げ伸ばしや、激しい運動などの無理はできません。
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変形性膝関節症の方へ 転ばないようにするために
はじめに:
杖を使うのを恥ずかしいという理由で躊躇される方がいます。ですが、杖をつくことにより転倒を予防できるのです。これは非常に大切な事で、膝関節の痛みや筋力低下のために足元がふらつき転びやすくなる前に、杖を上手く使って予防していきましょう。
■正しい杖の使い方
転びやすくなってから慌てて杖を使い始めても、正しい杖の使い方がわからないと杖の役割が十分に利用できないことがあります。少し早めに正しい使い方を理解して使用することお薦めします。
○杖の選び方
1.杖の長さ
杖の長さを決める上で簡単な指標となる数字があります。
身長の半分 + 3cm程度
ただし、患者さんによって腕や脚の長さには個人差があります。基本的には真っ直ぐに立った際、地面から手首に付け根までの長さが良いとされています。
2.杖の握り方
杖の種類や大きさ、手の大きさにもよりますが、人差し指と中指でまたぐような握り方が安定して良いでしょう。
3.杖のつき方
杖は必ず脚の悪い方とは反対側について歩きましょう。悪い方の脚と同じ側に杖をつくと、全体重が悪い方の脚にかかってしまいます。また、歩行時の方法ですが、杖と片脚を同時に出す方法も、杖と脚を別々に出す方法もありますが、どちらでもかまいません。ぜひ、歩きやすい方で試してみてください。
4.階段昇降時の使い方
杖を使って階段を昇るときは、杖を先に出して、良い方の脚から昇り、悪い方の脚をそろえましょう。一方、階段を下りる際には、杖を出して悪い方の脚から出して、良い方の脚をそろえましょう。
意外と慣れていない方には難しいと思います。練習して、上手に杖を使いこなしましょう。
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変形性膝関節症の運動療法
ここでは、変形性膝関節症の進行を予防するために、家庭でも出来る簡単で効果が期待できる運動療法を取り上げていきます。
ポイントは手軽な運動を決して「無理せず」に毎日「続ける」ことが大切です。最初は、医師や理学療法士の指導を受ける事を薦めます。
■筋肉を鍛える運動
○太ももの筋肉を鍛える運動 その1 <椅子を用いて行う方法>
1.椅子に座って、出来る限り背すじを伸ばしましょう。
2.膝をゆっくりとのばしていきます。
3.脚をまっすぐに伸ばした状態で5つを目標に数えましょう。
4.脚をゆっくりと下ろします。
5.これをセットで数回行います。すこしづつ回数を増やしても良いでしょう。
○太ももの筋肉を鍛える運動 その2 <寝て行う方法>
1.仰向けに寝て、片方の脚を伸ばし、もう一方の脚を軽く曲げます。
2.伸ばした脚をそのままゆっくり上に上げます。
3.5つを目標に数えて、ゆっくり下ろします。
4.これをセットにして数回繰り返します。
○お風呂で出来る運動 <入浴中に行う方法>
1.浴槽の壁に両脚をしっかりとつけます。
2.ゆっくりと、壁を押すように両脚に力を入れます。
3.膝を伸ばす時に力を入れて数回数えます。
4.これをセットに30回を目標に行いましょう。
○股関節の筋肉を鍛える運動
1.横向きに寝て、頭を手で支えましょう。
2.上の脚を伸ばしたままゆっくりと上に上げていきます(股を開くようにゆっくりと)。
3.数を数えてゆっくりと下ろします。
4.セットにして数回行います。
○柔軟性を高める運動
1.床に座って脚を伸ばします。
2.膝に力を入れてつま先を伸ばします。
3.伸ばした状態で数を数えます。
4.次に、膝に力を入れてつま先を反らしてますを数えます。
5.セットにして、片脚つづそれぞれ20~30回行いましょう。
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変形性膝関節症の薬物療法
変形性膝関節症に特別な薬物療法というものはありません。現在、他の疾患も含め治療に用いられている薬には沢山の種類がありますし、その使い方も様々です。
基本的には、薬物療法は「必要最低限」の薬を「適切な」使い方で使用することです。患者さんによっては、完全に医師任せで、自分がどんな薬をどのような目的で使っているのか理解していない方も少なくありません。
ぜひ、自分の膝関節の状態を正しく把握して、医師と相談の上で薬を選択する事をお薦めします。
「関節内注射」
■ヒアルロン酸
これは、軟骨の成分の一つであるヒアルロン酸を人工的に作った製剤です。一般的に医療機関で良く使用される製剤で、膝の関節の中へ直接注入します。このヒアルロン酸は、軟骨の修復を促して、膝本来の滑らかな動きを取り戻す効果が期待できます。
(あくまでも膝の状態によります)効き目は穏やかですが、副作用も少なく、定期的に注入できるメリットがあります。ちなみに、このヒアルロン酸の分子量は190万であり、生体内のヒアルロン酸に近く、粘性や弾性に優れていると報告されています。
■ステロイド剤
炎症を抑えて、痛みを軽くする効果があります。疼痛の著しい患者さんに対して、ヒアルロン酸よりも即効性と強い除痛効果が期待できます。しかしながら、感染やステロイド関節症などを引き起こすリスクがあります。したがって、抵抗力の低下している方や糖尿病などの合併所を持っている方に使用するのはお薦めできません。
■関節内注射における注意点
・入浴を控えましょう。 (注射後最低8時間以上は注射部位を濡らさないようにしましょう)
・注射部位をむやみに触ったり、もんだりしない。(特に不潔な手で触るのは絶対にやめましょう)
・軽い運動はかまいませんが、注射後に急に激しい運動は避けましょう。
(注)関節内は清潔な場所です。注射した部位からばい菌が入り感染を起すと大変な事のなってしまいます。注射後はむやみに触ったりするのは止めて、清潔に保ちましょう。
「非ステロイド系消炎鎮痛剤」
いわゆる世間で言われている「痛み止め」の事です。ステロイド性ではなく、炎症を抑えて痛みを和らげる作用を持っています。
一般的に医療機関で処方される薬の多くは1日に3回内服するものが多いですが、種類や患者さんの年齢、症状によって1日1回や2回の薬も使い分けられています。また、痛みと強い時だけ内服するといった屯服として使う事もあります。
また、坐薬(ざやく)といってお尻から挿入するタイプのお薬もあります。これは内服よりも痛みを和らげる効果が強いといった特徴があり、痛みの強い患者さんに処方される事が多くなります。
内服も坐薬もともに胃腸障害を引き起こすリスクがあります。胃や腸に症状がある方への処方は注意が必要となります。
(注)非ステロイド系の消炎鎮痛剤には数多くの種類があります。痛みを和らげる効果や、1日に内服する回数など程度の差こそありますが、どの薬にも胃腸障害などの副作用が報告されています。必ず、医師と相談して適切なものを選択し、正しい方法で使用することがとても大切です。
「外用剤」
塗り薬や貼り薬のことを外用剤といいます。塗り薬には、クリーム状のものやゲル状のものなどがあります。患者さんの好みや皮膚の状態、そして使い心地によって処方されます。また、塗りこむことによってのマッサージ効果も期待できます。
一方、貼り薬は温熱タイプと寒冷タイプがあります。温熱タイプは唐辛子の成分であるカプサイシンが入っており、温かく感じますが少々かぶれ易いという欠点もあります。また、寒冷タイプのシップは張るときに冷っと冷たく感じますので、冬場や寒い時期は遠慮される方も多くいます。いずれにしても、貼り薬のほとんどには非ステロイド系の消炎鎮痛剤が入っており、痛みを和らげる効果が期待できます。
(注)内服とは異なり、外用剤における胃腸障害の可能性はほとんどありません。皮膚を通じて組織内へ消炎鎮痛剤は浸透してき、痛みを和らげます。
もともと合併症がある方には使いやすいと言えるでしょう。ただし、薬自体の刺激や塗りすぎなどにより、皮膚の湿疹やかぶれが生じることがあります。特に皮膚の弱い方には症状が出やすいといえます。必ず医師や薬剤師から、含まれている成分や正しい使い方について説明を受けられる事をお薦めします。
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変形性膝関節症に対する装具療法
変形性膝関節症に使用する装具の目的は二つあります。
1)膝の関節にかかる負担を軽くすること。
2)関節を安定化すること。
■サポーター
サポーターは医療機関でなくても自分で気軽の購入する事が出来ます。ただし、サポーター自体には先の述べた装具療法の目的である膝関節の負担を軽減したり、膝関節の安定させる効果はありません。かなりの方が誤解していますので注意が必要です。
このさいのサポーターの効果としては、装着した時に感じる安定感と、膝関節の保温効果が主な働きといえます。
■足底板
足底板とは、靴の中に直接入れたり、足につけたりして使用する装具です。O脚を若干矯正することによって立ったり歩いたりする時に、膝の内側にかかる負担を減らして痛みを和らげることを目的にしています。
この装具は、変形性膝関節症の初期から中期に方に用います。進行して変形が著しい方にはあまり有効とはいえません。
■機能的膝装具
ここでいう機能的膝装具とは、プラスチックや金属などの枠組みで作られている装具と指します。この装具の効果としては、膝関節の安定性を高めることによって痛みを和らげることです。簡単な装具であれば、取り外しも簡単であり費用も比較的安くすみますが、関節安定効果としては高くありません。
一方、しっかりとした複雑な装具は関節を安定化させる効果は非常に高くなりますが、取り外しが面倒なことが多く、費用もかさむという欠点もあります。
■杖
膝関節だけでなく、脚全体にかかる負担を軽減させます。杖によって体重を分散させることによって歩行時の膝の痛みが緩和されますし、安定性も増すので結果的に転倒予防の効果も得られます。
杖には松葉杖をはじめ多くの種類がありますが、一般的に日常生活においてはT字杖が使用されています。
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変形性膝関節症に対するリハビリテーション
変形性膝関節症に対するリハビリテーションの主な目的は、膝の曲げ伸ばしの回復(可動域訓練)と、膝を支える筋力の回復(筋力訓練)の2つです。
この2つのリハビリテーションは膝本来の大きな2つの機能である「可動性(かどうせい)」と「支持性(しじせい)」を回復させる上でとても大切な内容です。
これらは変形性膝関節症の治療のみならず予防法としてもとても重要になってきます。また、人工膝関節置換術を受ける方や受けられた方にも大切になってきますので、多くの方々に行って頂きたい内容といえます。
■可動域(かどういき)訓練
可動域訓練とは、変形性膝関節症によって関節の動きが悪く滑らかに動かなくなったり、動く範囲が制限されたりした場合に、その動きの改善や制限された動きの範囲を広くするために行われます。
ただし、やみくもに動かすのでは時に症状を悪化させる事もあるので注意が必要です。膝の曲げ伸ばしの訓練は、膝を温めてから行うのが良いでしょう。温めてから行うと、痛みも比較的少なく、関節や筋肉も柔軟になっているのでより効果的です。
自宅で行う場合、蒸しタオルを10~15分程度膝にあてて温めたり、入浴時にゆっくりと温めてから浴槽の中で膝の訓練をするのが良いでしょう。
■筋力訓練
変形性膝関節症では、太ももの膝の周りの筋肉を鍛えて、膝の関節を支える力をつけることがとても大切です。なぜなら、膝には歩行時に体重の2~3倍、階段昇降時た運動時には5~6倍もの負担がかかるからです。
やり方としては、仰向けに寝た状態や、椅子に座った状態で片方の足を上げ、そのまま10秒程度維持するようにします。最初は少ない回数で短い時間の保持でかまいません。なお仰向けで行った場合は、脚は30~45度程度に挙げましょう。
この方法は、誰でも自宅でもやる事が可能で膝関節を支える上で最も重要な大腿四等筋の力を鍛える方法として最も簡単な方法です。ぜひ、試してください。(ただ、筋力はすぐにはつきません。最低でも2~3月間は続けてみましょう。)
また、水中歩行もお薦めです。プール内での運動は浮力のために「膝への負担が少ない」状態で行うことができますので、膝の痛みの強い方にも行いやすいといえます。
(注)医療機関で理学療法士のもとで行う場合は心配ありませんが、自宅などで一人で行う場合は「正しいやり方」と「適切な量」が大切になります。間違った方法や訓練のし過ぎでは逆に症状が悪化する事もあります。その際には必ず医療機関を受診して医師や理学療法士の指導を受けられることをお薦めします。
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変形性膝関節症の治療方法
変形性膝関節症の治療方法は「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。
保存療法の柱は、「リハビリテーション」、「装具療法」、そして「薬物療法」です。一般的にはこれらを組み合わせて行われます。
●保存療法
・リハビリテーション
・装具療法
・薬物療法
●手術療法
手術療法は、これらの保存療法で効果が得られない場合に選択されます。多くは、保存的治療で経過を見ていきますが、変形性膝関節症として進行しており、症状が著しい場合や、日常生活において大きな支障がある場合は早期に手術に踏み切る場合も少なくありません。
いずれにしても、変形性膝関節症の多くは「加齢による関節の変化」が主な原因でありますので、膝関節の機能を維持しようとする患者さん本人の強い気持ちが大切になってきます。
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変形性膝関節症の検査と診断
変形性膝関節症の診断は、一般的には次の手順で行われています。
■問診
患者さんが、いつ頃からどんな症状があるのか、現在一番困っている症状はどんなものなのか、(痛みなのか、それとも関節の動きが制限されている事なのかなど)、膝のけがなどの経験があるかなどを聞きます。
患者さんによっては、緊張などにより、ご自身の症状や状態などを正確にお話できない方もおられます。ぜひ、外来を受診される前に症状や状態などを頭の中で整理されておく事をお薦めします。
■触診
実際に、膝関節の可動域の程度(曲げ伸ばしの状態)、痛みの部位、程度、さらには腫脹や熱感の有無や関節の安定性(不安定性は無いかなど)をチェックします。
また、歩行する際の状態(歩容)や下肢全体のかたち(変形などが無いか)、そして筋肉の状態(筋肉の萎縮など)も確認します。
■レントゲン検査
レントゲンでは、膝関節を構成する3つの骨である大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿の骨)の「形」や「変形」の程度を確認します。
また、変形性膝関節症に見られる軟骨の磨耗(まもう:すり減り具合)の程度も、関節の隙間の開き具合から推定します。このレントゲン検査によって、変形性膝関節症の診断と病期(びょうき:進行の程度)を判断する事が出来ます。
■血液検査・関節液検査など
膝の痛みを生じる疾患は変形性膝関節症だけではありません。患者さんによっては他の病気が考えられる場合もあります。
その際には、血液検査や関節液検査などを行います。これによって、関節リウマチや感染性の関節炎などとの鑑別が出来ます。
■MRI検査
レントゲン検査では描出されない構造が画像で確認できます。これは、磁気を用いて膝の内部を映し出し、コンピューターで画像を作成する検査方法です。
この検査によって、レントゲンのように骨だけではなく、「軟骨」、「靭帯」、「筋肉」なども詳細に評価する事が可能です。
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変形性膝関節症の主な症状
それでは、変形性膝関節症にみられる主な症状について説明しましょう。
1)疼痛(関節の痛み)
変形性膝関節症の患者さんの殆どの方に、膝関節の痛みが生じます。その疼痛の殆どは、歩行したり、立ちしゃがみをしたり、階段の上り下りなどのいわゆる「運動時痛」です。安静にしている時でも痛みがでる「安静時痛」は非常に少ないので、この場合は他の疾患も考える必要があります。
痛みの部位は、変形している部位によりますが、通常は内側タイプが多いため、関節の内側に痛みを生じる事が多くなります。
2)可動域制限(膝関節の曲げ伸ばしの制限)
ある程度進行してくると、膝関節の屈曲(まげる)動作や伸展(のばす)動作に制限が生じてきます。曲がりが制限されてくると、「正座ができない」として外来を受診される患者さんが少なくありません。ただ、軽度の制限であれば日常生活に大きな支障はありません。
3)関節水腫(関節に水がたまる)
関節炎によって、関節の中に水がたまる事があります。この場合、膝関節が腫れぼったい、膝が重だるいといった症状になってきます。頻繁に水を抜くのは良くありませんが、ある程度の貯留が認められる場合には、抜くことが必要になってきます。
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変形性膝関節症の頻度
今までに報告されている調査から次の事がわかっています。
まず、変形性膝関節症は年齢とともに増加するということです。一般の人を対象にした疫学調査では、60歳以上で女性の約40%、男性の約20%がレントゲン上、「変形性膝関節症」と診断されます。
さらに、この割合は年齢とともに上昇して、80歳代の女性では半数を超える60%以上、男性でも約50%近くに達します。そして、レントゲン上で変形性膝関節症の所見がある人のうち約20%に膝の痛みや腫れなどの自覚症状が見られます。また、注目すべき結果として、どの年代でも女性の割合が男性に比べて1.5~2倍多いということです。
★O脚で肥満傾向の女性は要注意
現在、変形性膝関節症の発症・悪化要因について多くの研究が盛んに行われています。これまで報告されている内容では、「女性」、「肥満」、そして「O脚」について変形性膝関節症との関係があると言われています。
特に日本人ではもともとO脚の傾向があり、膝の内側により負担がかかりやすくなるため、日本人の変形性膝関節症はその90%ちかくが膝の内側により強い変形が見られます。いずれにしても、O脚で肥満傾向のある女性は要注意であると言えるでしょう。
カテゴリー:変形性膝関節症
変形性膝関節症とは
人工膝関節置換術の原因疾患として最も多いのが「変形性膝関節症:へんけいせいひざかんせつしょう」です。
変形性膝関節症とは、クッションの役割をしている軟骨がすり減り、関節に炎症が起こったり変形したりして関節に痛みを引き起こす病気です。
■正常な膝関節
正常な膝関節では、骨の表面にある軟骨が正常に機能しているため、膝関節に加わる負担や衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにしています。また、滑膜から分泌されている関節液は軟骨の成分の一つであるヒアルロン酸を含んでいる粘調度の高い粘り気のある液体で、膝関節が滑らかに動く潤滑油と軟骨の栄養の役割をはたしています。このように正常の膝関節では本来の滑らかな動きが痛み無く可能になります。
■変形性膝関節症(初期から中期)
まだ初期の変形性膝関節症では、軽度の関節軟骨の磨耗が生じているものの、本人が自覚するような症状はほとんどありません。
ところが、軟骨の磨耗がある程度すすむ(中期)んでくると、膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、そして歩行時の膝にかかる負担の増加など、さらには軟骨、半月板の変性による刺激などによって関節炎が生じます。
関節炎が生じると、膝を曲げ伸ばししたときの痛み(動作時痛:どうさじつう)や曲げ伸ばしの動きが制限(可動域制限:かどういきせいげん)が生じます。また、関節液が多量に分泌されて関節に「みず」がたまること(関節水腫:かんせつすいしゅ)が起こったりします。なお、この時は関節内のヒアルロン酸は逆に減少して、粘調度は低下しています。
<変形性膝関節症の進行度におけるレントゲン所見:初期>
<変形性膝関節症の進行度におけるレントゲン所見:中期>
■変形性膝関節症(進行期)
さらに変形性膝関節症が進行(進行期)してくると、軟骨の磨耗(まもう)がさらに進み、関節の土台の骨を成している(軟骨下骨:なんこつかこつ)が露出(ろしゅつ)したり、骨棘(こつきょく)といった骨そのものの変形が生じたりします。
ここまでくると、単純な膝の動き(膝を動かしたり立って歩いたりする)のたびに、硬い骨同士が直接ぶつかり合うために非常に強い痛みを生じてしまいます。また、膝関節の曲げ伸ばしの制限(可動域制限:かどういきせいげん)も高度となり日常生活において大きな障害となります。
<変形性膝関節症の進行度におけるレントゲン所見:末期>
カテゴリー:変形性膝関節症
人工膝関節置換術が必要な膝関節の状態
実際に、人工膝関節置換術が必要になる膝関節とはどんな状態なのでしょうか?
レントゲンで見てみると、「関節裂隙(かんせつれつげき):大腿骨と脛骨の間の間隙」が狭くなったり、進行した例では殆ど消失しています。
これは、関節軟骨や半月板がすり減ったり、断裂したり、消失したりしているためです。繰り返し骨に負荷がかかると、骨の表面は傷つき、本来の滑らかさを失いデコボコになって、硬くなっていきます。そして骨棘(こつきょく)といわれる骨のトゲが出来てきます。
さらに進行して、関節の破壊が高度になってくると、膝関節の滑らかな動きは出来ず、スムーズに動かなくなり、時にはひっかかったりします。当然痛みも増強していきますので、荷重(体重)をかけられなくなってきます。
このような関節軟骨や骨の破壊を起す病気の代表例として、「変形性膝関節症」と「関節リウマチ」が挙げられます。
これらの疾患に対して、内服や外用剤、関節注射などの薬剤療法、機能訓練を中心とした理学療法、そして装具療法などの保存的治療を行っても効果の得られない場合や効果の少ない場合は「人工膝関節置換術」が行われます。
カテゴリー:人工膝関節置換術
膝関節の動き
膝関節の動き:膝関節の屈曲や伸展する運動は、平坦な脛骨の関節面上を曲面の大腿骨の顆部が後方から前方に移動しながら回転することによって行われます。
関節の表面はゆるやかなカーブになっていて、膝を伸ばすと安定して、曲げると遊びができるようになっています。膝は、曲げたり伸ばしたり、ねじれたりする運動や、ころがりとすべり運動が同時に起きている関節なんです。
これらの滑らかな動きは、大腿骨と脛骨の形態に加え、半月板の形や働き、そして靭帯や筋肉の働きや動きがバランスよく成り立っているために可能なのです。
カテゴリー:人工膝関節置換術
血管と神経
血管と神経:膝にある血管と神経は後十字靭帯の後ろの方にあります。これらは筋肉に保護されるようにして集中して存在しています。
カテゴリー:人工膝関節置換術
筋肉
筋肉:膝関節を支え、安定性を与えて関節を滑らかに動かすには、「筋肉」がとても大切です。
膝の動きに関係する筋肉としては、太ももの前側にある「膝を伸ばす筋肉」と太ももの後ろ側にある「膝を曲げる筋肉」の2種類にわける事が出来ます。
膝を伸ばす筋肉の中心はみなさんもご存知の「大腿四頭筋(だいたいし(よん)とうきん)です。これは4つの筋肉に分けられており、それぞれ中間広筋(ちゅうかんこうきん)、外側広筋(がいそくこうきん)、内側広筋(ないそくこうきん)、そして大腿直筋(だいたいちょっきん)といいます。
これらの大腿四頭筋はお皿の骨である膝蓋骨をテコの原理で効率的に伸ばします。よく、膝の痛みが出たときにこの「大腿四頭筋」を鍛えることが大切になってきます。
一方、膝を曲げる筋肉として、内側に半膜様筋(はんまくようきん)や半腱様筋(はんけんようきん)、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)が膝を曲げるとともに、下腿の内旋(ないせん)を行っています。また、外側では大腿二頭筋と膝窩筋(しっかきん)が膝を曲げるとともに、下腿の外旋を行っています。
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靭帯
靭帯(じんたい):膝関節に負担がかかった負担を安定化させている働きがあります。
なかでも、「前後方向」と「ひねり」の運動時の安定を受け持っているのが「十字靭帯(じゅうじじんたい)」。左右の側方向の安定を受け持っているのが「側副靭帯(そくふくじんたい)」と言います。
ちなみに、十字靭帯は「前十字靭帯」と「後十字靭帯」があり、側副靭帯には内側と外側に1本づつあります。つまり、計4本の靭帯で構成されているのです。
前十字靭帯は脛骨(すねの骨)が前に出たり、ねじれたりするのを防いでいます。また、後十字靭帯は脛骨の後方へのズレと膝の反り返りをふせぐ働きがあります。
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関節液
関節液(かんせつえき):関節液は非常に粘調度の高いヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸という物質が主な成分になっています。
これらは滑膜から分泌されて、古くなると再び滑膜から吸収されます。関節に炎症が起こると、粘調度の低い関節液が多量に分泌されて滑膜からの九州が追いつかなくなってしまいます。
いわゆる「水がたまる」という状態になってしまうわけです。水がたまると、関節の痛みの原因やさらに腫れを増強させる原因いなってしまいます。
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滑膜
滑膜(かつまく):関節包に裏打ちされている膜で、関節液を生産して関節の中に送り込んで、古くなった関節液を再び吸収したりして取り除く働きもあります。
ちなみに、リウマチなどによってこの滑膜に炎症が起こると、膜が肥厚(厚くなる)したり、ぞうしょくしたりして正常に機能しなくなったりすることがあります。さらに進行して、滑膜が増殖すると徐々に軟骨や骨が破壊されてしまいます。
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関節軟骨
関節軟骨(かんせつなんこつ):膝関節にかかる荷重(体重)を受ける上で重要なはたらきをしているものとして、関節軟骨があります。
これは弾力性の軟骨(なんこつ)で、関節の骨の表面を覆っている暑さ2~7mm程度の層です。これらは、軟骨細胞とそのほかの成分(繊維成分であるコラーゲン繊維や、ゲル状のプロテオグリカンなどから構成されていて、非常に水分量が多いのが特徴になっています。
これらの存在によって、体重が膝にかかった時に、その負担を集中させないように分散させることが出来るのです。また、膝関節が動く時の摩擦を少なくして、「滑らかに動かす」重要な働きも担っているのです。
ちなみに膝関節の動きが非常に滑らかで、軟骨の摩擦係数(まさつけいすう)は約0.001と極めて低くなっています。関節軟骨には血管やリンパ管、神経が通っていないので、一度これらに傷がつくとなかなか回復しません。
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半月板
半月板(はんげつばん)とは、関節の中にある繊維軟骨(せんいなんこつ)でできたクッションのようなものです。
三日月のような形をしていて、膝関節を安定させたり、関節の円滑な動きを補助する働きをしています。
また、大腿骨から脛骨への荷重が伝達される際に、接触面積を2倍以上に拡大する事で、荷重が1か所に集中しないように分散する役割もしています。この半月板は滑膜から分泌される関節液から栄養を受けています。
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膝関節のしくみ
人工膝関節置換術について理解していただく前に、「膝関節のしくみ」について説明しておきましょう。
そもそも膝関節は、大腿骨(だいたいこつ;太ももの骨)、脛骨(けいこつ:すねの骨)そして膝蓋骨(しつがいこつ;お皿の骨)の3つの骨から構成されている関節です。この膝関節は荷重関節とよばれ、体重を支えています。一般的に歩行するだけで体重の約3倍。階段の上り下りや走ったりするときには約5~6倍の負担がかかります。
さて、これだけの負担を支えられるにはいくつかの理由があります。膝の構造とその働きについて説明していきましょう。
膝関節の中において、骨の表面は非常に滑らかな「軟骨(なんこつ)」で覆われています。そしてその隙間には半月板(はんげつばん)という繊維軟骨(せんいなんこつ)があります。
また、関節は関節包(かんせつほう)というふくろで覆われており、その内側にはひだ状の滑膜(かつまく)があり、潤滑油の役割をしている関節液(かんせつえき)を分泌しているのです。
これら、軟骨や半月板、そして関節液などのはたらきによって、膝関節は非常に滑らかな動きを可能にしているのです。
膝の屈曲角度(まがる角度):一般に、膝の痛みで困っている人を除き、膝の曲がる角度を意識しておられる方は少ないと思います。どれくらい曲がるか知っていますか?
膝の曲がる角度は、最大でほぼ150度です。これは日本の伝統である正座をする時の角度です。また、しゃがみこむ時は約120度、歩く時は約60度です。これらの曲がる角度は人工関節の手術においては最近非常に注目されています。
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人工膝関節置換術
人工関節置換術の殆どの手術は膝関節と股関節で占められています。ここでは、人工膝関節置換術について説明していきます。
人工膝関節置換術は英語で「Total Knee Arthroplasty ( TKA )」とか「Total Knee Replacement ( TKR )」と表記され、それぞれ略して「TKA」とか「TKR」と言われています。さて、人工膝関節置換術は、後ほど説明しますが「変形性膝関節症」や「関節リウマチ」などの疾患によって、破壊され変形した膝関節の痛みのために歩く事が困難になったり、日常生活に大きな支障を来たす患者さんに対して行われる手術です。
人工膝関節置換術を簡単に説明すると、関節の壊れてしまった骨・軟骨の部分を切除して、人工関節を埋め込みます。人工関節は金属(コバルトクロム合金やチタン合金)と超高分子ポリエチレンで出来ています。わかりやすい例えで言えば、歯がダメになった方に対して再びものがしっかり噛めるように入れ歯にするようなものです。つまり、人工膝関節は膝関節の「総入れ歯」と同じようなものであることをイメージしてください。
1950年代に始まった人工膝関節置換術ですが、当初は成績が安定せず現在まで様々な製品の改良や手術手技の改善が繰り返されてきました。その結果、人工膝関節置換術の成績は近年極めて安定して良好な結果を示し、今では患者さんが安心して受ける事の出来る手術になってきました。
安定して結果を残せるようになって以来、この人工膝関節置換術は年々増加しております。2004年のデータでは、1年間に日本で約4万例もの人工膝関節置換術が行われました。今では高齢化や手術手技の普及によって、更に増加し続けています。ちなみに、人工関節の先進国であるアメリカでは、この人工膝関節置換術は日本と比較してずっと一般的であり、毎年20万例以上の手術が行われています。そのため、日本とは異なりアメリカを始め海外では「人工関節専門医」として、人工関節の手術を専門にしている整形外科医によって行われています。日本ではまだ少ないですね。ですから、アメリカでの人工関節専門医の経験は日本と比べ物にならないくらい多く、知識や技術も優れています。もちろん、日本人は元来とても勤勉で器用ですから知識や技術は負けていませんが、経験では中々追いつけません。
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人工関節の固定方法
ここで、素朴なギモンが生じると思います。一体どうやって人工関節を固定するのか?
勘の良い方はわかるかもしれませんね。
一般的に、人工関節の固定方法としては骨セメントを用いる方法と、こつセメントを用いない方法があります。
■骨(こつ)セメントを使用する方法
骨セメントとは、金属と骨をくっつける接着剤のようなものです。アクリル重合体(ポリマー)の一種で、「早期に安定した固定力を得るため」に多くの整形外科医が使用しています。これは、人工関節の固定以外にも、歯科治療などにも使用されています。
(注意)非常に稀ではありますが、人工関節の手術中に骨セメントを使用する際、血圧が低下したり、ショックを起す場合があります。これについては、下記のサイトにおいてお確かめ下さい。
「厚生労働省の医薬品・医療用具安全情報」
■骨セメントを使用しない方法
人工関節の固定方法として、骨セメントを使用しないタイプの人工関節は、金属の表面に特殊な加工が施されています。これはハイドロキシアパタイト加工といって、人の歯や骨と同じ成分の物質でリン酸カルシウムの1種です。人工関節手術後に、人工関節の表面に加工されたハイドロキシアパタイトに骨が入り込んで固定されるのです。また、骨セメントの代わりにネジを用いて固定するものもあります。
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人工関節(人工股関節や人工膝関節)の材質
そもそも股関節や膝関節に使われる人工関節は何で作られているのでしょうか。
患者さんにとっては、人工関節の手術を受けるに当たり、体内に異物として入り、その多くの場合は一生の付き合いになるものですから良く知っておく必要があります。
現在の臨床の場で使用されている人工関節は、「コバルトクロム合金」や「チタン合金」といった金属や「セラミック」、「プラスチック:高分子ポリエチレンなど」から作られています。これらはインプラント(Implant)と呼ばれ、「体内に埋め込む」という意味で使われています。
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人工関節置換術の効果
当初、人工関節置換術は「関節の痛みをとる」ことを目的に行われてきました。近年の手術技術の向上や製品の改良などにより、痛みを取ることだけではなく、よりより生活の質を獲得することも併せて可能になってきました。
手術を受ける患者さんの状態によっても多少の差はありますが、現在では、人工関節の手術を行うことによって次のような効果が得られると考えられます。
■関節の痛みを取り除く、もしくは大きく痛みを和らげること
■関節の変形を矯正し、痛みを取り除く事で、本来の関節の動きを取り戻す環境を作れること。
■関節の痛みのために制限されていた日常生活での活動性をアップさせ、生活の質を高めること。
■関節の痛みのために、他の関節に与えていた影響を少なくして、他の関節への障害を減少させること。
■手術後のリハビリにより、関節の動かせる範囲(可動域)が向上したり、筋力がアップする事によって、活動性が高まり全身状態にも良い影響を与えることが可能。
また、上記以外にも関節の痛みがとれるために、運動などが可能になり、骨密度が上昇したり、糖尿病における血糖値が下がるなどの論文が発表されたり、研究も行われています。
つまり、人工関節置換術によって「関節の痛みをとる」という時代から「生活の質を高める」、そしてさらには骨粗鬆症(こつ そしょう しょう)や糖尿病などの改善など「臨床的な付加価値」も期待されています。
人工関節置換術の適応
人工関節置換術の適応となるのは、患者さんの日常生活スタイルによっても異なりますし、患者さんの状態によっても違いがあります。ここでは、一般的な人工関節置換術の適応について説明致します。
■関節の痛みが強く、ちょっとした仕事や観光などの行楽に支障を来たしたり、日常生活における通常の動作などが制限される場合。
■いわゆる保存的な治療方法(薬物療法や理学療法、運動量の制限や安静にしたりなど)を行っても、関節の痛みが改善されずに日常生活上において支障を来たしている場合
■画像検査(レントゲン検査やCT,MRIなど)において、関節炎や他の病気などが認められたり、その所見が進行していたり、所見上、手術が望ましいと判断される場合。
■関節の動かせる範囲(可動域)が大きく制限されており、日常生活において大きな支障を来たしている場合。
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人工関節手術を受ける年齢
以前は、人工関節の耐久年数を考慮すると、特別な場合を除いて、比較的高齢な60歳以上の患者さんに使用することが殆どでした。
なぜなら、60歳以下の方々にとって人工関節置換術を受ける事は10~15年後に再度、人工関節置換術の手術を受けて人工関節を入れ替える必要があるからです。
しかし、最近では人工関節の耐久性が向上してきたことで、50歳代や50歳以下の方でも人口関節の手術を受ける方が増えてきました。また、比較的若い年代で人工関節の手術を受ける方々が増えてきた理由があります。
それは患者さんの「関節の痛みがない状態で生活する」という事に対する価値観や、QOL(Quality of Life:クオリティ オブ ライフ=生活の質)が尊重されるようになってきたからです。関節の痛みから解放され、日常生活をスポーツも含め、より快適に過ごすために、この人工関節の手術を受ける方々が増えてきているのです。
(注)人工関節の手術を受ける時期
特別な場合を除き、最終的に人工関節の手術を受けるかどうかを決めるのは患者さん本人です。
人工関節置換術の手術は、その殆どの場合において緊急性はありません。つまり、患者さんご自身が手術の時期を選ぶことが出来ます。慌てて、急いで人工関節の手術を受ける必要はありません。
時間をかけて、良く考え、家族や友人、そして人工関節の経験のある医師とよく相談して決めることをお薦めします。
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人工関節の耐久性
人工関節の一つの大きな問題点として、その耐久性が挙げられます。
人工関節はかつて、年月とともに金属の部分がすり減ったり、骨とつないだ部分が緩んだり、細菌などによって感染してしまうなどが原因で、人工関節の耐用年数は10―15年とされていました。
しかし、最近は耐久性に優れた材質が使用され、緩みが少ないデザインの製品が開発されたことにより、その耐久性はアップしてきています。
現在、使用されている人工関節の耐久性は、患者さんの全身状態などにも影響を受けますが、15~20年以上耐久性があるといわれています。
実際、人工関節の機種によっては、25年の臨床成績も論文で報告されてきています。
近年、改良を重ねてきた人工関節の製品を使用して、経験豊富な医師が正確な手術を行えば、患者さんの年齢によっては、人工関節でほぼ一生使うことも可能になってと言えるでしょう。
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